ファッションの定義を塗り替える「Maison Margiela」の哲学
1988年、ベルギー出身のデザイナー、マルタン・マルジェラによって設立されたこのメゾンは、当時の豪華絢爛なファッションへのアンチテーゼとして、服の構造を一度解体し、全く新しい形に作り変える手法を提示しました。 デザイナー自身の顔を公に出さないミステリアスな姿勢や、モデルの顔を覆う演出など、常に「服そのもの」に焦点を当てる独自の美学は、現在もジョン・ガリアーノの指揮のもと、進化を遂げながら継承されています。
ブランドの象徴「4本の白いステッチ」と「カレンダータグ」
マルジェラのアイテムを語る上で欠かせないのが、背面に施された「4本の白いステッチ」です。 本来、ブランドネームを伏せるための「仮止め」であったこのステッチは、今や知る人ぞ知るブランドのアイコンとなりました。また、0から23までの数字が並ぶ「カレンダータグ」は、そのアイテムがどのコレクションラインに属するかを示しており、丸で囲まれた数字(例えば靴なら22)にブランドのこだわりが凝縮されています。
30年以上愛され続ける名品「タビ(Tabi)」シューズ
1989年のデビュー以来、ブランドの最大のアイコンであり続けているのが「タビ」シリーズです。 日本の足袋から着想を得た、つま先が分かれた独創的なデザインは、一度見たら忘れられないインパクトを放ちます。
ブーツ、バレエシューズ、スニーカーなど多岐に展開され、モードでありながらどんなスタイルにも不思議と馴染むその造形美は、世界中のファッショニスタにとっての「永久欠番」と言える一足です。
記憶と感情を呼び起こすバッグ「5AC」と「グラム スラム」
バッグコレクションにおいても、マルジェラらしい遊び心と革新性が光ります。
5AC: バッグのライニング(裏地)をあえて外側に引き出したようなデザイン。クラシックなハンドバッグの概念を覆す独創的なフォルムが魅力です。
グラム スラム(Glam Slam): 雲のような柔らかいキルティング加工(マトラッセ)を施した、通称「枕バッグ」。ラグジュアリーでありながら、安らぎとユーモアを感じさせる逸品です。
日常の断片を香りに変える「レプリカ」フレグランス
アパレルだけでなく、フレグランスライン「レプリカ(REPLICA)」も絶大な人気を誇ります。 「レイジーサンデー モーニング」など、特定の場所や記憶をテーマにした香りは、纏うだけでその情景へと誘ってくれます。 ファッションから香りまで、一貫したストーリー性と芸術性を持つメゾン マルジェラ。それは単なるブランドではなく、日常を新しい視点で捉え直すための「哲学」そのものです。